第2話 赤峰ヨシキ
あれから数日が経過した。
ほぼ毎日4人で集まりファイトをしている。
こんな日々、想像すらしていなかった。
学校が終わりまっすぐカードキャピタルに向かう。
赤峰さん、瀬田さん、平井さんと大会に向けてファイトの日々。
すごく充実しているーー
ーーずっとこんな日が続けばいいのに。
学校が終わりカードキャピタルに向かう途中、珍しく平井さんに会った。
「平井さん!!」
「騎士導くん?」
「珍しいね、1人なんて。」
「うん。赤峰さんと瀬田さんは先に行くって。」
「そうなんだ。じゃあ一緒に行こっか。」
しかしカードキャピタルに彼らの姿はなかった。
「あれ?店長、赤峰さんと瀬田さんは?」
「あぁ、なんか隣り町の"エトーカードキャッスル"に行くって言ってたぞ。道場破りだとかなんとか。」
「え!?道場破り!?」
エトーカードキャッスル。
国内最大店舗数を誇るカードショップのことだ。でも隣り町にあったかな?
「そういえば今日オープンって赤峰さん言ってたような、、、」
「僕たちも早く行こうよ!平井さん!」
隣り町はそう遠くはない。
変なことになってなきゃいいけど、、、
20分くらいかけて隣り町に向かう。そこには一際目立つ建物があった。
「、、、すごい。」
10階建てのその建造物はビルというより本当にお城に近い。こんなものが建築されていたことに気づかなかった僕も僕だ。
「な、中に入りましょう。」
自動ドアが無機質に開く。と同時に歓声が聞こえた。
今日オープンだから人が多いのか。いや、それもあるかもしれないがこれは、、、
「見て!騎士導くん!」
「!!」
人混みの中心に見覚えのある人影がある。
「赤峰さん!」
赤峰さんが誰かとファイトしている。
人混みのを掻き分けて前に進む。最前列に乗り出したところで聞き覚えのあるチャラい声がした。
「おーす!ユウキ!平井ちゃん!やっときたか!」
「瀬田さん!これはいったい、、、」
「赤峰と道場破りだっつって殴りこんだんだよ。このショップで一番強いやつとファイトさせろー!つってな!」
今日オープンしたばかりの店に一番強いやつなんているのか?と疑問に思いつつ瀬田さんの話に耳を傾けた。
「んで出てきたのが江藤の嬢ちゃん。オープンだから来てたのかもな。そんで嬢ちゃんが"この子に勝ったら相手してあげる"って。んで赤峰がその子とファイト中ってわけ。」
「江藤、、、さん?」
「江藤カエデ。エトーカードキャッスルの社長令嬢。まだ若いのに何店舗か運営を任されてるって聞いたことあります。ファイトの実力も全国レベルだとか。」
「あ、ありがとう平井さん。」
「今度の大会にも出てくるって噂だぜ。2人ともこのファイト、よーく見とけよ!」
「今、赤峰さんとファイトしている人は?」
「さぁ?嬢ちゃんの友達じゃねーの?名前もわかんねー!」
「さっき自己紹介してあげたでしょ瀬田コウタ!私はカエデ様の元で秘書をしてる石塚エミコよ!」
「あれ?そんなこと言ってたっけ?忘れちまったな。」
「こいつ!ムカつく!!」
「まぁいいわ。いくわよ赤峰!ライド!お化けのリーダーべあとりす!!イマジナリーギフト・アクセル!」
もうG3になってる。石塚さんの使用クランはグランブルー。ドロップゾーンを利用するのが得意なクランだ。
「べあとりすでヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。」
「ツインドライブ!、、、ゲット、ドロートリガー!パワーはリアガードに!」
「ダメージチェック。ゲット、クリティカルトリガー。効果は全てヴァンガードに。」
〜〜〜〜〜
「ターンエンド。」
「俺のターン。スタンドアンドドロー。」
「行くぞ。この世の全てのものを焼き尽くす黙示録の炎!!ライド・ザ・ヴァンガード!ドラゴニック・オーバーロード!!」
きた!赤峰さんの分身!かげろう最強のカード。オーバーロードだ!
ここ数日ファイトしてわかったことがある。
赤峰さんは強い!
僕が他のファイターとファイトしたことないからかもしれないけど、
この圧力!この空気!オーバーロードと一体化しているこの感じ!
石塚さんからは感じなかったこの迫力が赤峰さんにはある!
「イマジナリーギフト・フォース!」
「バーサーク・ドラゴンをコール。そしてスキルで相手のリアガードを退却!」
「退却は痛くないわ。すぐに蘇らせることができるもの。」
「そうだよな。これは相性が悪い。」
「ノーガード!」
「ドライブチェック、クリティカルトリガー。効果は全てヴァンガードに。」
「ダメージチェック。ゲット、ドロートリガー!パワーはヴァンガードに!」
「オーバーロードのスキル。CB1、手札を2枚捨てスタンド。」
「!!」
これだ。
オーバーロードの真骨頂。
直接手札が増えるわけではないがヴァンガードが2回アタックしてくるのはかなりの脅威だ。
赤峰さんは相性が悪いと言ってたけど、全然そんなことない。退却がなくてもかげろうは十分オーバーロードのスキルで渡り合える。
「もう一度、オーバーロードでアタック。」
「ちっ!完全ガード!!」
「ツインドライブ。クリティカルトリガー。効果は全てリアガードに。」
〜〜〜
「ターンエンド。」
石塚さんすごい!あの猛攻を凌いだ!
いくらG3ライドターンとはいえ、トリガーの出方次第でファイトが終わる可能性は十分にあり得る。そこをしっかり耐えてくるあたり、この人も只者ではない感じだ。
「よし!私のターン!べあとりすにライド!!イマジナリーギフト・フォース!」
「カエデ様の前で無様な姿を晒す訳にはいかないのよ!赤峰ヨシキ!」
「べあとりすのスキル!CB1、山札の上から3枚ドロップゾーンへ!リアガードを3枚レスト!レストした数だけドロップゾーンからお化けをスペリオルコール!」
「グランブルーの中でもお化けを軸にしたデッキですね。」
「そう。クランごとに、ある程度特徴がある。ユウキのロイヤルパラディンはスペリオルコールが特徴だったり、平井ちゃんのむらくもは同名ユニットをスペリオルコールしたりな。」
「さらにその中でどのカードを軸にするかによってデッキの中身が変わってくる。お前のロイヤルパラディンはアルフレッドが軸だけど、世の中にはアルフレッドを入れていないロイヤルパラディンのデッキも山ほどある。」
「なるほど。」
「もちろん、好きなカードを使うのが一番だぜ!そのカードが一番輝くようにデッキを構築する事もカードゲームの醍醐味の一つだからな!」
「べあとりすでヴァンガードにアタック!」
「ガード。」
〜〜〜
「ターンエンド。」
(仕留めきれなかった。なんなのこいつ。あの人とチームだっただけはあるってことね。)
「俺のターン、ドロー。」
「再び焼き尽くせ、黙示録の炎!ドラゴニック・オーバーロード!!」
「!!」
「ノーガード。トリガーなし。、、、私の、負け。」
「よくやったわエミコ。そう落ち込まないの。いいファイトだったわ。」
「カエデ様、、、」
単なるお嬢様と秘書という関係ではなさそうだ。もしかして瀬田さんの言う通り本当に、、、」
「赤峰、約束通り相手をしてあげる。うちのカードショップに足を踏み入れた以上、ただでは返さないから。」
「、、、」
ほんの数秒の沈黙。
静まり返るフロアに赤峰さんの声だけが聞こえた。
「やーめた。」
「!!」
「あんた!どういうこと!!?」
「だからやめたって。もう疲れたし。」
らしくない言葉。赤峰さんどういうつもりなんだろう。
「ユウキ!!」
「は、はい!」
「お前が戦え。」
「、、、え?」
何故か突然指名が入った。ちょっと待って。僕が!?
「ど、どうして僕なんですか!?赤峰さんのが強いのに!」
「そう言うわけだ、江藤。こいつが俺の代わりに戦う。チームメイトなんだしいいだろ。」
「は?何言ってんのあんた。負けたら出禁なのよ。」
聞いてない!そんな賭けをしていたなんて聞いてなさすぎる!
そんな大事な場面でどうして僕なんだ!
頭が痛い。
なにか悪夢を見ているようだ。
「大丈夫だ。なぁ、ユウキ。」
「ダメですよ!僕、まだ初心者なんです!勝てっこありません!」
そうだ。僕じゃまだ全然相手にならない。
毎日特訓してもらってるけど負けてばかりじゃないか。
絶対に勝てない。
僕じゃ、、、勝てない。
「俺、何回も言ってるだろ。ファイトは勝ち負けが全てじゃない。それに、、、お前は強いよ。」
「!!」
ーーー驚いた。
赤峰さん、僕のこと認めてくれてたんだ。
確かに勝ち負けが全てじゃない。
これは何回も言われてる。負けて得るものもたくさんあるって。
"そういえば僕なんのためにファイトしてたんだっけ?"
強くなりたいからーーー
ーーー違う。
みんなと仲良くなりたいからーーー
ーーー違う。
いや、違くないけど、もっと本質は。
楽しいからーーー
「わかりました。僕、戦います。」
-to be continued-
※ヴァンガードNEOはオリジナルルール、オリジナルカードです。実際のヴァンガードとは異なりますのでご了承ください。